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Essay 「素朴な疑問」

 「理系大学の教員はどのように理系進路を選択したのか?」、「数学や物理が得意だから??」、それともよく言われるように、「将来どんなことをしてみたいかで進路を決めた???」。そもそも、「大学の教員は、中高生のころ、大学教員を目指していたのか?」と「素朴な疑問」が思い浮かんだ。

 中高生の皆さんは、進路選択の一つとして、これから、「文理選択」するかと思う。本プロジェクトの趣旨に沿えば、「数学が苦手だから文系にしようかな、と思わずに、将来どのようなことがしたいのかで進路をきめたほうが良い(文理選択したほうが良い)」と言うべきなのかもしれないが、ここでは、そのようなことはあえて筆者から言わないでいようと思う。それよりも前述の「素朴な疑問」についてであるが、筆者自身、中高生のころ、今の職についていることを全く想像していなかった。そもそもこのような職があることも知らなかった。そのため、大学の教員を目指して「文理選択」したかというと、全く違うことになる(どちらかというと「理系のほうが覚えるのが少ないから、高校の時間割上早く帰れるから」程度で選択したような気がする…)。

 大学教員は、教員といっても、中学や高校の教員と異なり、「教員免許」が必要というわけではなく、「博士の学位(←研究者へのパスポート、研究能力の証明みたいなもの)」が必要となる場合が多い。そのため、大学卒業後、さらに大学院へ進学することとなる。筆者が所属する工学系の大学院では、一般的に修士課程(前期課程)の 2 年間と、その後の博士課程(後期課程)の 3 年間があり、合計 5 年間、大学院生として在籍することとなる(博士課程に進まず、論文のみの審査によって博士の学位を取得する場合もある)。大学の 4 年間を合わせると 9 年間になるものの、多くの人の場合、大学院は修士課程の 2 年間のみで、就職する(合計 6 年間)。

 中高生の皆さんからすれば、「大学」まではイメージできる人が多いかもしれないが、そのうえの「大学院」のことは存在すら知らない人がいるかと思う(筆者も大学に行くまでは、大学院の存在をよく理解していなかった)。近年では、理系の学生は、大学院の修士課程まで行く人が多いと思う(中高生の皆さんからみると、「まだ、勉強し続けなければならないのか」と嫌になる人もいるかもしれないが、筆者の考えでは、内容が異なるだけで、「勉強すること」は一生続く気がする…)。

 大学院の博士課程は、所定の単位(←履修した科目で一定以上の成績を修めるともらえる)を修得し、かつ、博士論文(少し長い作文のようなもの)の審査を経て見事合格すれば、修了である。このころになると、大学の教員になることを考える大学院生がいるかと思う(もう少し前からかな…)。

 現在、分野にもよると思うが、筆者が大学院生であったころに比べると、博士課程に進む大学院生の数が少ないように思う。そのため、若手研究者(筆者もまだ十分若手になるが…)が少なく、「次の世代(芸人で言うと第 7世代の次、第 8 世代…)では、以前に比べると教員ポストが空くことになる」という声も聞こえてきている(すなわち、教員のたまごがいない)。「博士の学位」をとれば、必ず大学の教員になれるとは限らないが(そのほか、研究業績なども必要)、この原稿を読んでいる人の進路選択肢のなかの一つに、「大学院に進学して大学教員を目指す」があっても良いのではないかと思う。

 さて、何だかんだで最初の「素朴な疑問」の答えを出していないが、もし、興味があれば、中高生の皆さんは、ぜひとも、自分たちで答えをみつけてほしい(無責任ですみません)。実は、中高生時代に大学へ行くことは、比較的、簡単である(筆者の中高生時代は、こんなに気軽に行けるところとは思ってもみなかったが…)。公開講座や大学訪問、オープンキャンパスなど、興味があればアポをとって直接、教員に質問できることもある(現役学生や大学院生の声も…)。ぜひともそのような機会を生かして、皆さんが「文理選択」する前に、多くの大学の教員に話を聞いてみるのも良いかと思う。

 ちなみに、本学には、とても気さくな教員や職員がそろっているので、気軽に遊びに来やすい環境である。「なぜ理系を選択したのか?」、「な ぜ そ の 分 野 を 専 門 と し た のか??」など、「素朴な疑問」に対してもきちんと答えてくれるはずである。いろいろな意見や予想もつかない回答があるかもしれない(筆者の意見は、あまり参考にならないが…)。そ の う え で、「文 理 選 択 し て み ては!?」、そのような機会が皆さんの進路を選択するうえで、少しでも手助けとなることを願う。