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Essay 「理系=数学が大好き!とは限りませんよ」

 「理系」と聞くと、皆さん何を思い出すでしょうか。数学の数式でしょうか、物理の公式でしょうか、それとも化学式でしょうか。おそらく大半の人は「数学」を思い出すのではないかと思います。でも、数字や数式の羅列を見ると頭が痛くなる、という人も多いのではないでしょうか。

 私は理系の研究者をしていますが、正直、数学はそれほど得意ではありませんし、学生の頃は興味もそれほどありませんでした。もちろん仕事で数式を使うことはありますので必要なのですが、数式ばかりの論文や本を見ると斜め読みして、結論だけ読んで終わりにしてしまうことも多々あります。つまり「数学が大好き !!」という人でなくても理系の人はいるのです。今回は、「『理系・文系』と学問を分けるのは間違っている !」という多くの方からの批判をあえて承知で、「数学が大好きでなくても理系に向いている人」について考えてみたことをお話しします。

 「チコちゃんに叱られる !」という NHK の人気番組がありますが、この番組のある回にて「数学はなんのために習うのか」という問いがあり、解答は「論理的な思考を身につけるため」ということが挙げられていました。たしかに数学は論理的な思考を身につけるためは非常に有効な手段であると思います。ですが、チコちゃんでそう解答していた先生に反対意見を言うつもりは全くないのですが、論理的な思考は数学からでなくても身につけることができると私は思います。

 例えば、今書きました文章の例で言いますと、①「論理的な思考を身につけるために数学は有効である」②「論理的な思考は数学からでなくても身につけることができる」という 2 つの文章は、全く矛盾していないことが皆さんにはわかりますよね?

 簡単に説明すると、もし①の文章が、「数学は論理的な思考を身につけるのに絶対に必要である」という文章であれば、②の文章は①を否定することになりますが、①の文章は「数学は論理的な思考を身につける有効な手段の 1 つである」という意味ですので、②の「( 効率は悪いかも知れませんが、) 数学以外の手段でも論理的な思考を身につけることはできる」という意味とまったく矛盾しません。このように、「文章」を分析することも「論理的な思考」と言えるのです。だから国語の授業を受けても論理的な思考は身につきますし、小説やネットの文章を読んでいても論理的な思考は身につきます。ただし、漠然と文章を読んだり、ネットに書き込まれた文章の上っ面に対して延髄反射するようなことでは身につきません。文章をしっかりと分析し、「この文章が意図しているモノは何か?」を考えることが必要です。

 もっと極端に言いますと、自分が好きな漫画からも論理的な思考を身につけることができます。例えばあなたが大好きな漫画があったとしましょう。なぜその漫画が好きか、理由を考えてみてください。そしてその漫画を、例えば「恋愛要素がある」、「好きな作者が作っている」、といった、その漫画を構成している要素で分解してみて下さい。そして、以前の好きだった漫画も同様に分解してみて下さい。おそらく共通する要素がいくつか見つかるはずです。その共通した要素こそが、「あなたが好きになる漫画の要素」ですので、その要素をもつ漫画を探せば、自分な好きな漫画を見つけられる可能性が高くなるでしょう。また、自分の好きなものでなくとも、例えば人気の漫画があったとして、その漫画を構成している要素を分析することで「なぜ人気なのか」「人気の無い漫画との違いはなんなのか」ということを知ることができます。私はこのような「論理的な思考による分析」が好きな人は「理系」に向いていると思います。

 で、実はこれ、数学でいうところの「因数分解」なのです。数学ではなにをやっているかよくわからなかったかも知れない「因数分解」ですが、このように数学でないことに関連付けると面白いでしょう ? また、漫画を例に挙げましたが、実はよくできた漫画やアニメの構成は、とても論理的に作られているものが多いんです。つまり、「漫画も物理も化学も数学も、論理的思考の積み重ねである」という風に解釈できれば、すべてが面白く理解できて、楽しく修得できると思いますよ。

 そして工学とは、その楽しく修得した、いわゆる「理系」に分類される知識を実社会で生かすための学問です。ではどのようにその知識を生かすのか、ということについては、工学部に入っていくつかの授業を受ければ嫌というほどわかると思います ( 笑 )。興味のある方はぜひ北九州市立大学 国際環境工学部を訪ねてみてください !!